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ヒラタキクイムシによる虫害と対策 被害の実態

プリント・カラー合板の製造工程と《虫食いの可能性》は?

プリント・カラー合板基材として使われる合板は、薄いベニヤ単板を接着剤で張り合わせて作られるもので、一般的にラワン材が多く用いられています。前述のようにラワン材そのものはヒラタキクイムシの食害を受けやすい木材ですが、「木材を60℃以上で加熱すると大部分の昆虫は死滅する。」と言われており、また、「ヒラタキクイムシは材中温度を50℃に30分以上加温すれば全て殺すことが出来る。」とのことから、合板の製造過程でベニヤ単板をドライヤーで高熱乾燥(140℃〜190℃)をし、さらに接着工程ではホットプレスにより高温(120℃〜130℃)、高圧で圧締(プレス)処理されるため、ラワン材に虫がいたとしても完全に死んでしまいます。しかし合板製造後に倉庫や流通での保管状態によっては、通常5〜7月頃に他の被害材から飛翔してきた成虫が卵を産みつけることがあります。

プリント・カラー合板は、主に薄物合板(厚さ2.4ミリ〜4ミリ未満)が基材として使用され、その製造過程において、接着剤や塗料を熱風乾燥(60℃〜100℃)し、印刷紙の貼り合せ工程でも90℃〜120℃のプレスロール等により熱圧締されます。材中温度の上昇により虫が死滅する可能性もありますが、基材合板の厚さや熱をかける時間によって、条件は変わってきます。製品は、厳しい品質検査を経た後、フィルム包装(シュリンク)により密封された状態で流通市場に出されます。また、直接加工業者に向けられるものはフィルム包装はされておりませんが、製造後直ちに検査、配送されるため、倉庫内における基材合板の保管、管理がしっかりなされていれば、工場出荷段階におけるヒラタキクイムシ生存の可能性は極めて低いと言えます。

プリント・カラー合板が被害を受けた!?

発生の原因として考えられるケース

a).使用箇所は…?

プリント・カラー合板を、ヒラタキクイムシの食害を受けた下地材や枠材、桟木等と接する部分に使用していませんか?

b).製造後の保管場所の状態は…?

プリントーカラー合板が開梱されたままの状態で、虫害を受けやすい他の木材製品(非防虫処理製材品、木製バレット等)と一緒に倉庫や工場に保管されていませんか?

被害の型と診断

食害を受けた枠材等から成虫が羽化し飛び出るときの脱出孔として食い破った穴であり、プリント・カラー合板から発生したものではありません。

プリント・カラー合板の導管に産み付けられた卵から孵った幼虫が食い荒らしたものと考えられます。

※前述の通り、ヒラタキクイムシは被害発生から1年前が産卵の時期であることから、被害を受けたプリント・カラー合板が1年前にどこにあったのかが特定できれば発生原因が究明できる可能性があります。

被害を発見したときの処置方法

1.応急処置として
殺虫剤による処置

木粉が出た穴に詰まっている木粉を掃除機で吸出し、市販の殺虫剤を虫穴に専用ノズルで注入します。また、被害の出た周囲の非塗装部分や継ぎ目にも殺虫剤をスプレーします。これを4〜6月頃にかけて毎月1回程度と、さらに幼虫が木材の表面近くに出てくる晩秋にも行います。

殺虫剤の種類

主成分としてホキシム、フェニトロチオン、エトロフェンプロックス等を使用したエアゾール式のものが使いやすいでしょう。
商品例:サンプレザーS((株)ザイエンス)、アリシスLS(ケミプロ化成(株))、バポナ(アース製薬(株))

[注意]殺虫剤使用時は部屋の換気に心がけるなど殺虫剤に記載されている取扱い説明書に従って正しく使用して下さい。

※虫穴に殺虫剤を注入した後、爪楊枝等の木片で穴を塞いで下さい。塞いだ部分が目立つ場合はクレヨン等で色補修をして下さい。

ヒラタキクイムシの生態は、産卵から幼虫までの1世代1年であることから、駆除効果の確認には1年くらいの期間が必要です。もし1年で被害が止まらないときは、翌年の同じ時期に上記の処置を練り返します。

※被害が広範囲に及ぶ場合やヒラタキクイムシ以外の害虫の時は、防蟻施工業者などの専門の処理業者にお問い合わせ下さい。


参考文献

1) わかりやすい林業研究解説シリーズ:「乾材害虫と屋内で発見される昆虫」
  <野淵輝、鈴木憲太郎>
2)ラワン材の防虫:(財)林業科学技術振興所
  <雨宮昭二、野淵輝>
3)家屋害虫:vol12.No2
  <岩田隆太郎>
4)家屋害虫事典:井上書院
  <日本家屋害虫学会>